心の世界

昨夜の全豪オープンテニス男子シングルの決勝、すごい試合でした。

ロシアの25歳のメドベージェフ選手とスペインの36歳のナダル選手、序盤は圧倒的にメドベージェフが押していました。メドベージェフはデフェンスが素晴らしく、一気に攻める所はジョコビッチ選手に似ている印象です。反対にナダルはいつも全力でファイトする攻撃的な選手。メドベージェフはミスが少なく、少しづつ有利に試合を運び、2セットを先に取ってしまいます。

ここで驚くべき場面を見ました。2セット目を取ったメドベージェフが観客の応援を促すため煽るように手を挙げると何とブーイングが起きたのです。明らかに観客はナダル寄りでした。判官びいきや長く試合を見たいからという理由で負けている選手を応援する事はよくあると思います。実は夫も私もナダルを応援していました。夫はこの時点でナダルが負けると思って早々に寝室へ引き上げてしまいました。それほどメドベージェフは隙がなく強かったのです。

3セットめに入り、徐々に流れが変わってきました。ナダルがポイントを取る度に大歓声。イライラし始めたメドベージェフが審判にクレームをつけ、その事でさらに観客はブーイング。結果、3セット目を落としてしまうのです。ブレイク出来そうなゲームもあり、勝利はそこまで来ていたとメドベージェフは感じていたかもしれません。

その後ナダルが4セットと5セットと連取し、試合に勝利します。最後までハラハラする試合でしたが、観客は終始ナダルを熱狂的に応援していました。勿論ナダルはテニス界のレジェンドで、世界中にファンはいるでしょう。昨年はけがのため、引退まで考えたというナダルを応援したい気持ちが多くの人にあったのかもしれません。不安など微塵も見せず、ひたすら諦めずファイトするナダルの姿は感動的でした。

もしあの時、メドベージェフがイライラせず、心の平安を保ち続け自分のプレイに徹していたら勝利の女神は彼に微笑んでいたかもしれません。5時間を超える試合の中で、二人の心の中でどんな事が起きていたのでしょうか。もし無観客だったら結果は違っていたのでしょうか。

応援のエネルギーは見えません。自分を信じ切る心の強さも比べることはできません。でも見えない何かや心の世界を感じた素晴らしい試合でした。