先日、図書館で新刊の本「川の旅人」を借りました。2022年にお亡くなりになった野田知佑さんの旅を記録した写真集で懐かしい気持ちで読みました。
まだ田舎に住んでいた若い頃。従弟が面白いから読んでごらんと貸してくれたのが椎名誠さんの「怪しい探検隊」シリーズの一冊でした。椎名さんとお友達が焚火をしたり、海に潜ったり。ただ楽しく遊ぶ様子が面白おかしく描かれた本でした。その時、気になった人が野田知佑さん。肩書がカヌーイスト。カヌーで川を下るのが仕事だという。気になって野田知佑さんのエッセイを読むと、文章も読みやすく当時セルフで撮っていたという写真もステキでワイルドさに憧れたものでした。
カナダの大河ユーコン川を何日もかけてカヌーで下り、船の中で料理し、食事をし、眠り、時にはハーモニカを奏でる。そんな冒険があるなんて驚きでした。はっきりとした言葉は覚えていないのですが、生き物としての野生のスイッチを入れておくと、カヌーで寝ていても熊の気配や川の瀬音など流れの変化に気が付き目が覚める、というような事が書いてありました。それがどういう意味なのか気になりずっと覚えていたのですが、数年後インドに行った時にこういう事なのかもと思い至りました。
カジュラホで瞑想をしているとすべてと繋がっているような一体感を感じました。インド人ともつたない英語ながら話をし、人間として同じ土俵に上がる事の楽しさを知りました。自分の内なる強さ、自由さを感じた時、野田知佑さんの言葉を突然思い出し、野生のスイッチがやっと私にも入ったと思いました。当時の私は野田さんが自然と一体になり、心を解き放ちながら楽しむ姿に心惹かれたのだと思います。
その後私もカヌーに乗ろうとと隣町に出来たカヌー体験施設で試乗してみました。が、あまりの不安定さにカヌーイストになることは諦めました。でもその時の水面の近さ、川からの景色は素晴らしかったです。一回限りの体験でした。
そしてもうひとつ後日談。故郷の街は大きな川が流れているのですが、なんとその川をカヌーで下り、キャンプをしに椎名誠さんと野田知佑さんがやってきたのです。慌てて帰ってきた椎名ファンの従弟とキャンプをしている河原に見に行きました。皆さんが焚火を囲み、キャンピングチェアに座って話している様子を私たちギャラリーが聞くというかたちでした。ネットもない時代、聞きつけた人たちが集まっていました。私もその情報をどうやって知ったのか全く覚えていません。ただ野田知佑さんの日に焼けた顔が焚火に照らされ素敵だった事だけ覚えているのです。
